ルパン制作ブログ ルパン座トーク ルパン制作スタッフによる制作裏話

新しいルパンが始まる!友永×矢野×浄園 de ルパン座トーク!

2015.09.28

こんにちは!テレコム制作進行見習いのナカノンです。
今回は、放送開始直前記念・特別座談会をお届けします!
総監督の友永和秀さん、監督の矢野雄一郎さん、プロデューサーでテレコム・アニメーションフィルムの社長でもある浄園祐さんの3名に、いろんなお話しをうかがいます!緊張します…!

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◆ 今日はよろしくお願いします!まずはみなさんと「ルパン三世」との出会い、そして今回の「ルパン」についてどんなものをつくろうと思ったのか、教えていただけますか?

友永:40年前にはじめて見た「ルパン」のインパクトは強烈で、大人っぽいストーリーやマニアックなアイテムもあって、それまでのアニメーションとは一線を画したような作品だったんです。だから今回も、初めて見る人に、かつての自分が受けたのと同じようなインパクトを与えられて、かつ今風な作品にしたいと思いましたね。

 

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矢野:私はルパンの新シリーズ(2ndシリーズ)を見ていた世代なんです。映画の「カリオストロの城」や、2ndルパンの「さらば愛しきルパン」、「死の翼アルバトロス」とか、なんて面白い作品なんだと思ってました。それで就職活動の頃にテレコムの作品歴を見て、まさにそれを作った会社だったと。迫力があって何かごちゃごちゃしているような(笑)、てんこ盛りでおもしろい作品がつくりたいなと思ってテレコムに入ったんですよ。これは今までずっと思ってきたことなので、今回は当時自分が感じていたものが出せればいいな、と思ってます。

 

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浄園:僕がテレコムに着任した翌年の仕事始めの日に、「僕のいるうちに、テレコムのみんなと<風魔>を作りたい」と挨拶したんです。実は僕は「風魔一族の陰謀」がすごく好きなんです。

 

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◆ 「<風魔>を作りたい」と仰ったのはなぜですか?

浄園:当時の東京ムービー作品で好きだった作品って、今になってよく考えると全部テレコムの作品だったんですよ。「風魔」の作画は当時のテレコムの集大成だと思ってます。あの頃はバリバリ現役の20~40代でやんちゃなアニメーターが大塚康生さんにくっついて、無茶して、好き勝手にはみ出して、すごいものを作ってやろうとしていたと思うんです。そういう人たちがリミッターを外した瞬間が盛り込まれてて、作品もすごく自由で、見ていて本当に楽しかった。そういうアツくて作画にパワーがあるアニメをぜひみなさんと作りたいです、と。それが今回のTVシリーズで実現できましたね。

◆ そういう思いを具体的にどうやって実現していったのでしょうか?

友永:造形では、今回は横堀くんをキャラクターデザインに据えて、大塚さんのルパンを踏襲しながら横堀くんの個性というか、かっこよさみたいなものを表現してほしいと思いました。横堀くん本人もおしゃれな方で、細かいアイテムにもこだわりを持っている方ですからね。それから若い女性アニメーターもふたり、キャラクターデザインに起用しました。

◆ 稲手さんと田口さんですね。

友永:女性のコスチュームとか、色々な小道具を担当してくれて、そういうアイテムなどは非常に面白い表現ができてると思います。

浄園:今回はオシャレ感をどうやって出すかも大事でした。イタリア人が先行で観るから、かっこよくないといけない。だから今回は不二子ちゃんもレベッカも衣装替えがたくさんある(笑)。

矢野:稲手さん、田口さんに資料をもとにいっぱい設定を用意してもらって(笑)。

 

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友永:彼女たちに関しては、我々が受け入れたというより、衣装やカラーリングは僕らよりうまいなと思ったから、それはもう受け入れざるを得ない。逆にお願いした、という感じですね。

浄園:そういう風に受け止めてくれる人がいるところは、テレコムの強みでしょうね。今回はシナリオの高橋くんを筆頭に、メインスタッフに若者も多いんですよ。ベテランのしっかりとした基礎の上に、若いエッセンスをどんどん取り入れられる。若者とベテランが一緒になって作ってる感じがありますね。
かつてのルパンは、同じような年代のクリエーターが肩を並べて「お前より俺のほうがうまいぞ」と思いながら競いあっていた人たちの思いが爆発した作品だったんですよ。今回はどちらかというと家族的というか、世代間がとてつもなく広いんですよね。だから見た人は懐かしさと同時に新しさも感じると思います。

◆ 他にこだわったところはありますか?

浄園:今回は美術もとてもいいです。今までのルパンといちばん違うところかもしれない。こだわったキャラクターの線とのマッチングは最高で、背景の情報量の多さも、味もある。作品全体のクオリティに大きく貢献しています。30代の山子くんがルパンらしい舞台を設計してくれてますね。

 

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浄園:それとキャラクターの表現についても、モンキー・パンチ先生の漫画から飛び出してきたようなつくりになっていて、今の深夜アニメにラインナップされたときに異質感があるんじゃないかなと思います。

友永:昔やってた、トレスマシンで描いていくような雰囲気ね。

浄園:そうなんですよ。ズレとかいびつさとか、そのときの絵描きの感情がそのまま伝わってくるような感じですね。

矢野:私は、とにかくキャラクターのポーズを崩してほしかった。四角四面にピシっと「気をつけ」して、ただしゃべっているようなシーンは絶対やめてください、と。画角が斜めに傾いてたり、そういうところで躍動感とか見た目の面白さを出したいと思いましたね。今回は5人全員がそろうことがまれだったので、全員距離をあけてくれ、と。キャラクター同士の距離感を大事にしたかったんですよ。

◆ なるほど!普段は慣れ合ってない面々が、いざという時に団結してとてもかっこよかったです…!

浄園:例えばルパンと五ェ門が一緒に座るのはやめてくれと。アジトでも、ルパンと次元は同じソファーに座るけど、五ェ門は端っこで突っ立ってる。カメラがそっちに振るか引かない限り、五ェ門は画角に入ってこないし、その会話に五ェ門は能動的に入らない。

 

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浄園:五ェ門は話を聞いてないようで聞いてるし、ルパンがピンチのときはいてくれて構わないんだけど「俺もやるぞ!」って前向きなのはやめてほしいと。そこは「我関せず」というか、三人のなかではいちばん距離が遠いっていう感じ。次元の場合はルパンの隣にいて、ブツブツいいながら2人でフィアットに乗って次の話数に行く。でもそこに五ェ門は絶対いません。

◆ 絵コンテの段階ではどうでしたか?

矢野:とにかく絵を動かしたかったので、その前提でコンテを切ったりしました。

友永:矢野くんの絵コンテは、らしさがよく出てたよね。

浄園:矢野さんは、コンテチェックで手いっぱいで、がっつり担当した話数は少ないですけどね。全話数のコンテをやってるようなものですから。テレコムルパンらしくするための調整を、絵コンテの段階で矢野さんが、原画では友永さんがやると。

◆ 今回、友永さんを総監督、矢野さんを監督と、2人体制にしたのはなぜですか?

浄園:友永さんは生粋のアニメーターなんですよ。僕は友永さんのいちファンで、この会社の社長で、プロデューサーでもあるけど、どの視点から見ても、友永さんがただ単純に現場でメガホンを振ってるだけじゃもったいない。友永さんの絵が1カットでも多いほうがいい。友永さんの手の届かないところは矢野さんのような方に支えていただく。特に最初の話数は、友永さんにルパンらしいルパンをどんどん描いてもらって、みんなに覚えてもらったり思い出してもらったりしましたね。

友永:確かに、思い出してもらうっていうのはありましたね。

浄園:友永さんたちが描くのは最初から「ルパン」なんですよ。友永さんがスススーっとラフを描くだけで、それが生き生きとしたルパンに変わるんですよね。

◆ 今回登場する新キャラクターの代表、レベッカとニクスのキャラクターづくりについて教えていただけますか?

友永:レベッカの場合は、不二子とどう対比させるかがいちばん大事だったかな。

浄園:不二子ちゃんって今までずっと紅一点だったから、レベッカが出てきたときに大人の女としてどう立ち振る舞うのか。ルパンをめぐる関係の中で、不二子はどう動いていくのかっていう。コミカルな中でもそういうところを出してますね。

◆ 第5話「魔法使いの左手」の不二子のセリフにシビれました!

浄園:あのセリフは、レベッカには絶対言えないセリフなんですよ。ぐっと大人の女性として際立つでしょ。ルパンからしても、レベッカよりグっときちゃう。そういうシーンがたくさん入っています。

友永:ニクスの場合は、銭形との対比ですね。銭形をコミカルなだけのキャラじゃなくて、できる刑事として扱うために協力なライバルが必要だったんです。

浄園:今回の銭形はキメるところをキメられれば、あとはどれだけずっこけてもいいっていうか。ニクスと対峙したときに銭形のかっこよさも出てくるんですよね。

 

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◆ 最後に、ここまでの手ごたえと、見ていただきたいポイントをお願いします!

友永:今までのファンの人も、初めて観る人も、とにかく楽しんでほしいです。それぞれのキャラクターのしぐさやセリフの面白さ。あとはもう、何が起こるのかを楽しんでほしいかな。

矢野:この作品は後半にいくにしたがって、ものすごく手間がかかっているような感じがします(笑)。ちゃんと観てもらわないとスタッフみんな成仏できないなと(笑)。そしてそれに見合った、むしろ見返りがあるぐらい楽しい面白い話になっています。最後まで見てくださるとありがたいですね。

浄園:TVスペシャルからルパンに携わって、テレコムに来たからこそ、今できる最大限のルパンがつくれている気がします。金太郎飴のように、1話1話のどこを切っても「テレコムのルパン」になっているので、必ず楽しんでもらえると思います。

◆ 友永さん、矢野さん、浄園さん、ありがとうございました!今週、いよいよ「ルパン」がスタートします!皆さまお見逃しなく!