ルパン制作ブログ ルパン座トーク ルパン制作スタッフによる制作裏話

シリーズを振り返って~友永×矢野×浄園 de ルパン座トーク!パート2!~

2016.03.31

皆さま、こんにちは!テレコム制作進行見習いのナカノンです。
改めまして、「ルパン三世」全24話はお楽しみいただけましたか?

今回の「ルパン座トーク」は浄園プロデューサー、友永総監督、矢野監督による放送終了後鼎談をお届けします!この三人による鼎談は放送前にも行っておりますので、そちらも合わせてお読みいただければ幸いです。(9月28日更新 「新しいルパンが始まる!友永×矢野×浄園 de ルパン座トーク!」
(半年振りにお話を伺うので緊張します…!)

 

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◆ 今改めて振り返ってみて、どんなシリーズだったと感じていらっしゃいますか?

浄園:とにかく反響の大きなシリーズでしたね。ビジネス面では、版権使用の申し込みがとても多かった。ゲームとのコラボやCM、プライズなど爆発的な数のオファーが来て、大手流通さんからも通常特典やボックス用特典などのオファーがありました。視聴者の皆さんからの反響という意味でも大きかったです。視聴者の反応があるというのは、それだけ多くの方に見られているということ。もちろん賛否あるのは承知してますが、賛も否も含めて反応が返ってくるというだけで作品としては「成功体験」だと思います。そういった「成功体験」が大事だと若い子たちには常日頃から言ってます。今回の反響はテレコムのみんなに覚えておいて欲しいですね。

 

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◆ 友永総監督は、シリーズを終えてどのような感触がありますか?

友永:作画的にルパンらしいポーズを大事にしようとしてきました。大塚康生さんから引き継いだキャラクターごとの作画やシチュエーションごとのポーズをうまく表現できればいいなと。だけど、時間やら何やらの制限で難しいと感じる時もありましたね。

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◆ 矢野監督はいかがですか?

矢野:自分の中ではもっと振り切るつもりでしたが、なかなか振り切れなかったかな。ルパン的にはもっとアクティブなものを見せたかった。言葉はなくとも芝居だけで通じる、みたいな画面も作りたかった感じはあります。

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◆ ここはうまくいったな、というところはありますか?

矢野:レベッカの心情やキャラクターの変遷は、シリーズを通してうまくいったと思います。役者さんのおかげも大きいですが、ちゃんと芯が通って安心できましたね。

◆ 浄園プロデューサーはどんな思いでこのシリーズに臨んだのでしょうか。

浄園:若い人にも往年のファンたちにも満足してもらうルパンとは?ということが課題でした。30年ぶりのテレビシリーズという王道を任されたわけですが、今この時代の「ルパン三世」をどう作るか、を考えました。
現在はその王道感の正解を導くための、スタートラインにようやく立てた感じです。プロデューサーとして、今後「ルパン三世」という作品のムーブメントを盛り上げていくためにはどうしたらいいのかというヒントをたくさんもらえました。

◆ 手応えはあったと言うことですね。

浄園:おかげさまで視聴率も良く、観ている方たちもいい反応を見せてくれましたからね。作画的にも古臭くとられなくてよかった。そこはこだわったところですから。
正直なところ、アニメってまず見た目が大事。シナリオや色彩、すばらしい背景、こういうものを最後の話数まで見てもらうためには、やっぱりキャラのビジュアルをしっかりしないといけない。だから見栄えにはこだわりましたね。
そして新しい女性キャラクターのレベッカは、僕がこだわったところです。アニメの中で描かれる「女の子」は重要な要素。でも「ルパン」は圧倒的に女性キャラが弱いコンテンツだと思っていました。「アニメはよく見るけどルパンは見たことがない」というような若い世代に「ルパン」を見ていただくきっかけとして、魅力的な女の子の投入が必要でした。だからレベッカは絶対必要だったんです。

 

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◆ ええっ!でも不二子がいますよね??

浄園:スーパーすぎるんですよ(苦笑)。不二子はもはや「いい女」のアイコンになってしまっていて、アニメの文法の「女の子」とはまったく違う女性キャラなんですよ。

矢野:不二子は高嶺の花なので、女性キャラの振り幅の中で、若い女の子の演出部分がなくなっちゃうんですよね。

友永:それに新しい強力なキャラが出るとそれだけストーリーや演出の幅が広がるしね。

◆ 22話(「ルパン、頂きに参ります」)を見て感じました。ルパンはルパン自身のことは語らない。でもレベッカがルパンへの思いを語ることで、不二子は「手に入れたとたんにレベッカは目標を失う」って言ってのける。ルパンと不二子、レベッカの関係性が分かる回でしたね。

友永:レベッカは不二子と対比させることで、ルパンが引き立つ。ニクスは銭形と対比させることで、ルパン・次元・五ェ門も引き立つ。ダ・ヴィンチはルパンとの並列人格というか、対比させて今一度ルパンの魅力を引き出そうと。

浄園:30年ぶりの新シリーズといっても若い人たちにはこれが初めての「ルパン」になるわけだし、そういう人たちには「ルパン」の長い歴史とブランドは通用しない。「ルパン」でもこれくらいやらないと厳しいだろうという気はしていました。加えてやはり古参のファンの方からも「青ジャケルパンもいいじゃん!」と思って欲しかった。
声優、音楽、キャラクター性は変わらない。でも古臭いと言われなかったところに、今後の「ルパン」のカギがあると思っています。

◆ 深夜帯にやったことで、「自分たちの時間帯にルパンが入ってきてくれた」と感じた方もいらっしゃったんじゃないでしょうか?

浄園:今の若い人がどう見たのかというのはちゃんと調べて検証したいですね。どこでルパンを見るスイッチを入れたのか。今回の「ルパン」の何がよかったのか。冷静に分析して次のシーズンに繋げていきたいと思っています。もちろん我々も放送前にオープニングをYouTubeで流したり、色々なところとコラボしたり頑張ってやったけど、結果として何が一番響いたのかは聞いてみたいです。「銭形って声変わったんだ」というツイートも、まだあるくらいですからね。

◆ え!だってもう5年になりますよね!?

浄園:青ジャケットになったことも意外にみんな気づかない(笑)。「そういえば緑と赤だったな」程度で。

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◆ 浄園プロデューサーはファンの声をとても大事にしてらっしゃいますよね。

浄園:仕事だけではなく、トークイベント等でファンの方たちと時間を共有したことが大きかったと思います。いわば消費者の声ですよね、それをちゃんと聞いておいたことが活きたんじゃないかと。いい事も悪い事も含めてたくさん受けてきてたので。

◆ 今回のシリーズは、全体を通してレベッカというキャラクターの感情の変遷になっていると思います。この、レベッカを軸にする構想はどのあたりから抱いていたんでしょうか?

矢野:構成上では最初からレベッカで引っ張ろうという話はしていました。最初はできるだけハメを外して、最後に「ちょっといい女」になるくらいがいいんじゃないかなと。それくらいじゃないとルパンには釣り合わない。

浄園:そういう意味では、物語をレベッカ目線で見ているところも僕の中ではあるんですよ。

友永:22話をレベッカ回にした理由は、レベッカの話を一旦終わらせて、お客さん的にもレベッカ的にもあそこで踏ん切りがついたことにしました。最終2話(「世界解剖」前後篇)はやっぱりシリーズとしての終わりに持っていこうと思いましたからね。

矢野:最終2話はルパンとダ・ヴィンチの決着がメインでした。ただ、レベッカがそこに入り込まないとすごくもったいない気持ちがあった。だから何とかレベッカ絡みでダ・ヴィンチを倒す展開に、という話を脚本の高橋さんにお願いしました。自分はそういうのが好きなので(笑)。
早い話数の段階で出てきたアイテムや理屈から、彼女の記憶を取り戻すようなものはないか掘り起こしました。そしたら「あの指輪があるじゃないか」と。それで一生懸命そこに持っていきました。

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◆ 1話と最終話が見事に対比されていますね。

浄園:僕は高橋くんに「最後に飛び降りるシーンをもう一回入れてくれ」っていうのだけは言ったんです。そうすると観た人が「あっ」て思うから。一番最初にダイブする印象を植え付けたので、ラストのシーンを塔の上にして、あそこまで上り詰める理屈を作ってほしいと。

 

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◆ あのダイブシーンはとても恰好良かったです!

浄園:男と女のああいうシーンを作るとき、安全な場所よりもヒリヒリしている場所のほうが効いてくる。それにそのほうが「ルパン」っぽいかなと。

友永:レベッカが飛び降りながら記憶を取り戻していく、あの組み立てが印象に残ってる。「いいなぁ」と思いましたね。レベッカの反応もうまく練られてるなと。

◆ ダ・ヴィンチの設定は最初からあったんですか?

友永:いや、最初の頃のプランには出てなかったんじゃない?検討を重ねる内にダ・ヴィンチを敵にしようって話が出て、じゃあどう終わらせようかと。過去の教訓からダ・ヴィンチを悪者にするのはやめようと。ああいう形で今の時代に来てしまったくらいにして、勧善懲悪的な展開はやめようって話をしました。ダ・ヴィンチにはダ・ヴィンチの生きざまがあって、ルパンたちにはルパンたちの生きざまがある。それがたまたま鉢合わせた。

◆ ダ・ヴィンチの立ち位置が非常に特殊でおもしろかったです。芸術家として、よりよい世界の姿に変えていくんだという思いがあって。

矢野:それが最後のレベッカの展開に効いてくる。イタリアと言えば恋の都、というイメージから引っ張られるものもあったし、もう一度レベッカを出して結婚のテーマを引き出したかった。そしていい別れ方にしたかったんです。

 

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友永:どんなエンディングにするかはさんざん考えました。誰かが死んで何かの決着がつくようなことではなく、見終えた後に余韻を感じてもらえるようなラストにしたかった。ルパンたちがふっと消えて行ってしまった、みたいな。「ちょっと寂しいなぁ」と思ってもらえるくらいに留めたい。もしかしたら、またルパンたちがイタリアの地にふっと帰って来るかもしれない、そういう余韻は残したいなと。

◆ ルパンたちが去っていくラストシーンも素敵でした!

浄園:最初にあがってきたシナリオの舞台は飛行機の中だったんですよ。申し訳ないけど、それは全部やめてもらって。ルパンたちは長い仲ですけど、かといって一緒に航空券とって「さあ共に行こう」という感じはまったくないですよね。
最後は電車で、カメラを見ずに、ひとりひとりがワイプで消えていく。「フィアットに乗ってバイバーイっていうんじゃなくて、かっこいい終わり方にしてくれ」と。

友永:(改訂された脚本で)字面を見たときは、どういう絵になるのかなと思ってましたけどね。

浄園:そうですね。本来ああいう形は無理だと言われていたんですよ。

友永:そしたら、矢野くんがああいうコンテを描いてきた。

浄園:僕は電車の往復で消えさせたかったんです。ガタンガタンでひとり消え、ガタンガタンでまたひとり消え、そして最後にルパンだけがカメラを見てサーっといなくなって、fin。よーしこれだ!と思ったんだけど…

矢野:実際に映像にするのが難しくて。電車だとそもそも切れ目がないから間が取れないよと(笑)。

浄園:僕としては、そういう雰囲気でいいんですけど、みなさんは実際に映像にしなきゃいけないですからね(笑)。

 

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矢野:最初はミラノ駅みたいな大きなステーションの端っこみたいなシチュエーションでしたが、これは単線じゃないとダメなのでちょっとウソをつこうと。どうしても見せたいシーンありきで、シチュエーション重視でコンテを描きました。

浄園:でも今回のは、そんなことを感じさせないほどの映像になっていると思います。最後のアフレコのときに、(小林)清志さんと栗田さんが、もうあてる声はないけどみんなで一緒にじーっと見てたんです。そしたら清志さんが「これいいよなー」って。で、栗田さんが「いいっすねー」って言って終わったんですよね。

◆ 素敵な話ですねぇ!

浄園:だから僕らにとっての最後の収録は、収録されないふたりの会話で終わった。それはすごく印象深かったし、よかったなと思いましたね。

◆ このブログを読む方は、シリーズ通して観終えて、ブログにも半年付き合ってくださって、これが最後だと思って読んでくださると思います。そのファンの皆さまに、最後にメッセージをいただけますか。また、次に「ルパン」を作る機会があるとしたら、どんな「ルパン」を作りたいのかもお聞かせください。

友永:ご覧いただいている皆さん、最後まで見てくれてありがとうございます。喜んでもらえたとしたら嬉しいです。こちらも作った甲斐がありました。手ごたえも充分感じています。ありがとうございました。
次の「ルパン」に関しては、映像作品はそのときの生き物であるから、そのときの状況によってどんな「ルパン」へと転がっていくのか、ちょっと自分でも想像がつかないですね。

矢野:次の「ルパン」は、舞台やスタッフ個別の好みなども変わってくると思いますが、もう少しシリーズを通してのスタイルを明確に表現できたらと思います。アニメーションの所作っていうのかな、爽快感をもっと出せないかなぁと。コミカルな話がもっと多くてもいいかもしれませんね。理屈抜きで楽しかったと思えるような作品が、と言いながら作るのは大変だろうと思いますけど。楽しい話数だけど制作が大変だった21話(「日本より愛をこめて」)が頭をよぎるので(笑)。
今回の作品を見て気に入っていただけたとしたら、全てのスタッフの努力の結晶ですので、そのスタッフたちの思いを受け止めていただいてありがとうございます。とにかく試行錯誤しながら作ったので、苦労した甲斐がありました。本当に感謝以外ありません。ありがとうございました。

浄園:レベッカ役の藤井さんが、最終回の塔の上の演技のときに「5秒待ってください」と言って、アフレコスタジオが一瞬静まり返ったんです。あとで聞いたら「涙をこらえていた」と。あそこで演者を泣かせる台本があって、それをプロとして我慢して止めた藤井さん、というのがすごくレベッカとリンクしていたんですよね。
今回はクリエイター主導っていうのかな、作りたい人がみんなで詰め込んだものが、いいアクが出ているし、いい思い込みもあった。ぶれてはいけない芯はあるけど、いろんな人が触って書きなぐったのが表れた作品になっていると思います。
30年ぶりのこのスタイルを、ライター陣、キャラデザインも美術監督も基本同じスタッフで、またぜひやりたいと思っています。今の時代の新しいルパンとしてのベースはできて、充分ブランディングもできたと思います。
僕が言ってる「あれやりたい、これやりたい」という言葉の端々を、ちゃんとこういう形にしてくれるスタッフがいるからこそできる。それはテレコムと、ルパンに関わるすべての人たちの能力の高さゆえです。栗田さんなどのキャストの方々も含め、友永さん矢野さんはもちろん、そういった方々のスキルの高さは遺憾なく発揮されたと思います。
今回は、同じ「ルパン」でも色々とレシピを変えました。それがこの2015~2016年の代表作になって、さらに次のシーズンにつながってくれたらと思います。そしてそこから劇場作品までいくんだと。それが僕の希望です。

◆ 浄園さん、友永さん、矢野さん、ありがとうございました!!次のシリーズが実現すると嬉しいです。ぜひよろしくお願いします!

 

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前回の鼎談は放送前でバリバリ制作中の時に伺いました。制作を終えた今、この作品にかけた想いを改めて伺い、30年ぶりに復活したシリーズにかける制作陣の意気込み、スタッフだけでなくキャストの皆さまのエネルギーがこの24本を完走させたんだと改めて感じます。浄園さんが最後に語った藤井さんのアフレコ話、とても感動的ですよね!
何より、放送を楽しんでくださったファンの方々の存在が大きいです。12月に開催したイベントで熱気を直に感じ、ツイッター等で感想を拝見し、「ルパン」がどれだけ愛されている作品かを再確認しました。その作品に携わる幸運とプレッシャーを改めて感じると同時に、ファンの皆さまの声が、制作陣の作るエネルギーに転化したと思います。これまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
そして…本当にテレビシリーズが終わってしまったんだなと感じます。いや、終わらせてはダメですね!シーズン2があることを願って仕事にまい進しなければなりません!
4月24日の阿佐ヶ谷LoftAさんのイベントにお越しの方はぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。またこのブログで皆さまにお目にかかれる日を願っています。ありがとうございました!