オープニングウラ話~テーマは「飛び出す絵本」!昔懐かし立体感の映像~
2015.12.24
皆さまこんにちは!テレコム制作進行見習いのナカノンです。クリスマスですねえ。骨付き肉が食べたいですねえ。
さて本日はクリスマス特別企画!
キャラクターデザインを手掛ける横堀さんが演出・原画・絵コンテを務めたオープニングについてです!
まさに横堀ワールド全開!作画の熱量がマジですさまじい、オープニング映像のウラ話をお届けします!
19日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催した「ルパン座トーク」でもオープニングウラ話が飛びだしました!イベントに参加された方ももう一度お楽しみいただける濃い内容になっていると思います!
本日のウラ話は横堀さん、原画の佐久間さん、制作進行の栗栖さんにお話しをお聞きします!
原画の佐久間千秋さんはルパン座トーク初登場。入社3年目の若手原画さんで、キャラクターデザイン補佐の田口さんと同期!今回のオープニングを作るにあたり、横堀さんが一番手に指名した期待のエースなんです!
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◆ まず栗栖さん、今回のオープニングに携わった方を教えていただけますか?
栗栖:コンテ・演出・作画監督が横堀さん。基本の素材となる原画、動画、仕上、美術、撮影はほとんどテレコムの社内でやりました。今年の4月に入った新人動画さんもみんな参加してる!シリーズでは3Dレイアウトを担当してくれてる宮川さんたちも撮影としての本領を遺憾なく発揮してくれた。
テレコムで作業した素材をステロタイプさんが「料理の鉄人」ばりに料理してくれたって感じだね。
(株式会社ステロタイプ:CGやグラフィックデザインを幅広く手がけるデザイン会社。『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』のオープニング、今回のルパンのPVにも参加)
◆ テレコム・アニメーションフィルム・オールスターズwithステロタイプ!ですね!
オープニング、とにかくとってもカッコイイです!YouTube動画再生も最初の2日間で約100万PVありました。周りの方からの反響はいかがでしたか?
横堀:好意的に受け止めてくれてほっとしましたね。
栗栖: Twitterのコメントも好意的で安心した。
佐久間:評判がよくて嬉しかったです。
◆ オープニングを演出することになって、まず考えたのはどのようなことですか?
横堀:まず、青ジャケットを着せようと。
◆ どういうことですか?
横堀:最初のキービジュアルでは背広を着させてないんです。
◆ 肩にかけてますね。
横堀: 2枚目のキービジュアルでは、片方だけ袖に手を入れてる。
◆ 本当だ!
横堀:段階を踏んで青ジャケットを着させてる。だからオープニングの初めに、背広を羽織るルパンを登場させたんだ。青ジャケットになるのをオープニングで入れたら今回の新しい「ルパン」の世界に入りやすいかと思ってね。
佐久間・栗栖:知らなかったー!!そういう意図があったんですね。
横堀:それと音楽がセカンド(「ルパン三世」セカンドシーズン)のアレンジになるので、曲のイメージを崩さない方がいいと思ったんだよね。それで過去シリーズのオープニングパターンに沿うように作ったんだ。
◆ 過去シリーズを踏襲したつくりになってるんですね。
ここからはカットを細かく追いたいと思います。まずはルパンが青いジャケットを羽織るシーンから。部屋の中に小物が沢山ありますね。
横堀:色々な人のアイディアがつまってるんだ。映写機は美術監督の山子くんがアドリブで描いたものなんだよね。これから始まるよ!っていうのを表してる。
◆ 山子さんが!雰囲気が出て素敵です。その後ルパンが外に出て…ここの色使いも綺麗ですね。
横堀:ここも山子くんが手掛けてる。色がいいよね。山子くんが描いた背景を、ステロさん(ステロタイプさんのこと)で効果を加えていただいたんだよ。
◆ 家がびょーんと起きあがる動きも可愛いです。
横堀:テーマは「飛び出す絵本」なんだよ。
◆ なるほど!
横堀:家がずずっと前に寄ってくるのは、密着マルチ(レイヤーの別れた素材を別々にスライドさせること)で更にトラックアップ(被写体に向けてカメラが近づくこと)させてるんだよね。ブック(手前にあるブロック塀などの別レイヤー素材)を細かく素材分けしてもらってるんだ。
◆ 枠の動きも印象的です。
横堀:オープニングでの枠のデザインはローマ数字のⅢを模しています。デザインと動きはステロさんにやっていただいたんだ。「箱の中に入ってる感じ」が欲しいとお願いしたんだよ。夏休みの工作課題みたいな、ティッシュの空き箱でジオラマ作るような感覚。飛び出す3Dではなく奥行のある立体感で、昔のアナログチックな感じをやりたかったんだよね。
◆ ルパンが枠の前に飛び出してきます。ルパンの影が背景に落ちてますね?
横堀:そうなんだよね、面と面の間に空間がある感じにしてるんだよね。
◆ 影があることで飛び出して見えます。ミニルパンのシルエットは佐久間さんが担当されてるんですよね。
佐久間:はい、ルパンの他にも次元、不二子のシルエットもやりましたね。
◆ グラデーションがかかっていて線画のラインが分かりますね。
横堀:絵コンテの段階ではシルエットだけのつもりだったんだよね。
◆ え?そうなんですか?
横堀:佐久間が原画で顔まで全部描いてるんだよ。色の処理はステロさんがやってて、「原画が良かったから使うしかない」と言ってくれてグラデーションをかけてくれたんだ。
◆ 次元パートでは、黄色の背景から実景に流れるのが非常に印象的ですね。
栗栖:この効果もステロさんだね。最初は実景に近い絵から入る予定だったの。でも仮で入れた黄色バックの印象が強く残ってて、それを本番でも活かして欲しいとお願いしたんだ。
◆ 次元のシルエットも動きがあっていいですねー。
横堀:作画上だと、次元が垂直なところに寄っかかる動きだったんだよ。それをステロさんが斜めに使って芝居をうまくみせてくれたね。
◆ Twitterでも話題になっていたこの飛んでくる銃弾は3Dですよね?
横堀:作画です(笑)。
◆ え?!この「片目で見ると銃弾が飛び出して見える」ってとこですよ?次元の!
横堀:これは作画をリピートで使ってる。
◆ これ作画なんですか?!
横堀:回転のスピードを調整して銃弾をトラックアップとフォーカスの移動をさせて、飛んでるように見せてるんだよ。
◆ こんなに飛び出して見えるのに作画…?見せ方次第で3Dよりも3Dになるんですね…驚きです!
お次は不二子ちゃんシーンです。
横堀:コーナリングのカットは、バイクを寝かせる動きをつけてトラックバック(被写体からカメラが遠ざかること)してるんだよ。原画の省エネテクニックだね。シャワーシーンでは特殊な光がかかってちょっと透けてるんだけど、うまく見えないようになってる(笑)。
◆ 手前のシルエット不二子も可愛いです。
佐久間:こんなに画面内での動きがあると思わなかったので完成品を見てびっくり。元々1か所で動く予定だったんですよ。
横堀:ステロさんがああいう形にしてくれたんだ。奥の不二子とかテロップも見せなきゃいけないから、シルエットを反転してうまく使ってくれた。今回のシルエットはみんな良かったね。
佐久間:本当ですか?ありがとうございます!
◆ 次に五ェ門が登場です。カメラが回りこむような動きをしますが、どういう風に作ったのでしょうか?
横堀:手前の竹はセルなんだけど、五ェ門の後ろは背景美術。それをスライドさせてるんだよ。後ろの背景は3層か4層くらいに分かれてるね。
◆ なるほど…手前の竹が移動するから、カメラが回りこんでるように見えるんですね。五ェ門パートにはシルエット五ェ門が登場しませんね。
横堀:尺の都合でね…ステロさんの提案で、代わりに五ェ門のカットを最後シルエットにしたんだよ。ここの原画は佐久間が描いてる。どうだった?
佐久間:難しかったです。剣のアクションをどうやったらいいか分からず…横堀さんに聞きに行きましたね。
◆ 銭形パートにやってきました。カーチェイスは3Dで作られてるんですか?
栗栖:そうだね。今回のオープニングでは3Dっぽく見える箇所がいくつかあるけど、純粋な3Dカットはこのシーンだけなんだよ。
◆ 重ね重ね驚きです…。
横堀:ここのシルエットの横走りは稲手だね。(稲手遥香:テレコム・アニメーションフィルム所属のアニメーター。本作では田口麻美と共にキャラクターデザイン補佐を務めたほか、各話の原画も務めている。)
正面から画面に向かって走っていくのが佐久間。
◆ フィアットの登場には驚きました!
横堀:原画を担当したのは滝口さん。
(滝口禎一:テレコム・アニメーションフィルム所属のアニメーター。本作では主に話数作監を務める。横堀の同期)
最後のルパン止め絵のところは、ステロさんが動画の上から原画を載せてくれたんだよ。
佐久間:そうだったんですか!すごい…!
◆ フィアットで一休みするルパンと次元のカットに、2人の関係性が見えますね。
佐久間:レイアウトは横堀さんが描いて、原画に起こしたのは私です。
◆ フィアットを運転するルパンのカットは疾走感が出てますね。
横堀:ここ、いいよね。原画は佐久間にお願いしたんだ。ブレに相当こだわってて、人物と車体を別々にブレをつけてもらってる。あと画面はフィックスの予定だったんだけど、疾走感を上げるために少しトラックアップしてるんだよね。
◆ ワルサーの重厚感があっていいですね。佐久間さん、描いてみていかがでしたか?
佐久間:銃は難しかったです…!モデルガンを色々といじりながら描きました。
◆ 靴のアップがあって、最後は5人の集合カットで終わります。
横堀:靴のカットは白井さんが担当してる。
(白井裕美子:テレコム・アニメーションフィルム所属アニメーター。本作では主に原画、各話作監を務めている。原画デビュー当時の先生は横堀。)
◆ 5人が並んだ後でポーズを取り直すところが雰囲気ありますよね。「銭形がルパン一味になった」と巷で噂になってるようですが…
横堀:昔の映画館に飾ってあった「ロビーカード」のイメージだったんだよ。撮影の合間に写真を撮りました、っていう感じで。
◆ そうだったんですか!
横堀:最初は、メイキングっぽく見せるためにカメラとライトが描かれてたんだよね。
◆ 「ルパン組撮影快調!」みたいなイメージだったんですね。
最後に、オープニング制作を振り返って印象的に覚えていることはありますか?
栗栖:イタリア放送用には向こうの放送フォーマットの関係でオープニングを作らなかったから、スケジュール的には国内OA合わせで制作に入ったんだ。このままだと1話のOAに間に合わないかも、っていうスケジュールだったの。だから1話用にとりあえず作って、2話、3話と回を重ねるたびに差し替えていくっていうやり方も検討したほどだった。でも浄園さんに相談したら「1話で全て決まるから、最初から最高にいいものを作ろう」と言われたんだよね。妥協しないと決めて、スタッフ一丸となって頑張りました。その熱さが視聴者の方にも伝わったと思う。
◆ スケジュールが厳しかったのは聞いてましたが…ハードな状況の中でこのすごい映像を完成させたんですね。ステロさんも大変だったのではないですか?
横堀:ステロさんの作業期間は1週間ぐらいしかなかった。
栗栖:事前の打ち合せでイメージを共有してもらって、原画1カット上がったら送って、動画1カット上がったら送って…上がった素材からどんどん渡していきましたね。
横堀:仮素材で作ってもらって、最後に素材を差し替えてもらった。大変だったけど、お互いに盛りあがって、最終的に「楽しかった」と言ってくれて良かったね。
◆ いいものを作る気概と同時に、テレコムだけではなくステロの皆さんも楽しんで作りあげた感じが伝わってきます。その熱気がそのままオープニングの映像の熱量につながってるんですね。
横堀さん、佐久間さん、栗栖さん、ありがとうございました!
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オープニングは、「枠の奥にあるキャラの動き」「枠の動き」「枠に寄りそうシルエットの動き」など、一つの画面に色々なことが描かれてるので目が追いつきません!見返す度に新しい発見があるのも魅力です。
ちなみにオープニング後半でフィアットの後ろが開いてるのは、エンジンを冷却してるからだそうですよ!『カリオストロの城』みたいに改造ターボエンジンが隠れているのかと思っていましたが、違いました…!
明日は今年最後の放送となる第13話「ルパン三世の最期」です!ウラ話もお忘れなく!
そして12月31日(木)には、大晦日特別企画☆エンディングウラ話をお届けします!紅白歌合戦の石川さゆりさんを応援しつつ、こちらもお楽しみに☆
それでは皆様、良いクリスマスを!